一言で言うと

FX のトレンドフォロー(順張り)は、相場の流れ(トレンド)と同じ方向にポジションを持つ考え方です。 トレンドは、高値・安値の切り上げや、移動平均線の向き・並びで判断されることが多いです。 トレンドが出ない相場では損失が続きやすく、勝率は低めで損益比で補うと説明されることが多い手法です。

移動平均線の順張りを試したのに、細かい損切りばかり続いた経験はないでしょうか。 この記事では、トレンドの見分け方、よく紹介されるルールの例、手仕舞いの考え方、弱点を順に整理します。 最後に、自分のルールを書き出して過去チャートで検証する方法も紹介します。

トレンドフォローとは

順張りとは、トレンドと同じ方向にポジションを持つ売買スタイルです。 同じ意味で「トレンドフォロー」とも呼ばれ、反対の考え方が「逆張り」です。 トレンド相場では順張り、レンジ相場(一定の幅を上下する相場)では逆張りが取引しやすい、という対比でよく説明されます。

学術研究では、過去一定期間のリターンがプラスなら買い、マイナスなら売りを持つ戦略を「時系列モメンタム」と呼びます。 トレンドフォロー型のファンドのリターンは、この単純な戦略で説明できる、とする研究もあります。 研究の結論は一様ではないため、後半の「研究ではどう見られているか」で両方の見方を紹介します。

トレンドの見分け方

トレンドの見分け方としてよく紹介されるのは、次の 2 つです。

  • 値動きの形:高値と安値が切り上がっているか、切り下がっているか
  • 移動平均線:線の向きと、複数の線の並び順

架空のサンプルデータの上昇トレンドで、山と谷がともに切り上がり、3本の移動平均線が上から短期・中期・長期の順に並んで上向きになる様子を示す図

高値・安値の切り上げ・切り下げ(ダウ理論)

ダウ理論は、高値・安値の並びでトレンドを定義する古典的な考え方です。 上昇トレンドは、山(高値)と谷(安値)がともに切り上がる状態を指します。 下降トレンドは、山と谷がともに切り下がる状態です。

ダウ理論では、トレンドは「否定されるまで続いている」とみなします。 たとえば下降トレンドは、安値が切り上がり、そこからの上昇が直前の戻り高値を超えるまで続いていると考えます。 上昇トレンドはその逆です。

FX 向けの解説でも、トレンド終了の目安として次の 2 つが挙げられています。

  • 押し安値を割る:上昇トレンド中の押し目でつけた安値を下回ると、上昇トレンドが崩れたと考える
  • 戻り高値を超える:下降トレンド中の戻りでつけた高値を上回ると、下降トレンドが崩れたと考える

また、大きなトレンドの中には、逆向きの小さな動きがはさまるとされます。 上昇相場では、これが「調整」にあたります。 この調整が、次に説明する押し目・戻りにあたると整理できます。

移動平均線の向きと並び

移動平均線が上向きなら上昇、下向きなら下降と読むのが基本です。 複数の線を使う場合は、並び順も手がかりになります。

  • 上昇トレンド:短期線>中期線>長期線の順に並び、上向き
  • 下降トレンド:短期線<中期線<長期線の順に並び、下向き

この並びは「パーフェクトオーダー」と呼ばれます。 長期線でトレンドの向きを決め、短期のサインはその方向のものだけ見る、という使い方も紹介されています。

使う期間は出典によって違います。 次の表はどれも「例」で、最適な期間を示すものではありません。

出典・文脈 期間の例
OANDA 証券のパーフェクトオーダー用インジケーター(初期設定) SMA 20・50・100
日本の一般的な解説 5・25・75
英語圏の解説 50・200

移動平均線でトレンドを判定し、RSI などのオシレーターで過熱感を確かめて、過熱した局面を避ける組み合わせも紹介されています。 RSI の読み方は、RSI の記事で解説しています。

移動平均線の計算方法や期間の考え方は、移動平均線の使い方で詳しく解説しています。

押し目・戻りを待つ考え方

トレンドフォローで入る場面は、大きく 2 つの系統で紹介されることが多いです。

  • 押し目・戻りを待つ:トレンド中の一時的な逆行を待つ
  • ブレイクを条件にする:直近の高値・安値を抜けたことを条件にする

ブレイクを条件にする考え方は、ブレイクアウトの記事で扱います。 ここでは、押し目・戻りを待つ考え方を整理します。

押し目・戻りとは

押し目は、上昇トレンド中の一時的な下落のことです。 戻りは、下降トレンド中の一時的な上昇です。 これを待って入る考え方は、押し目買い・戻り売りと呼ばれます。

押し目・戻りを待つ理由は、より有利な価格で入れるため、値幅を取りやすいからだと説明されています。 押し目の目安としては、次のようなものが紹介されています。

  • 安値同士を結んだトレンドライン付近での反発
  • 移動平均線付近での反発

押し目を待つときの注意点

押し目を待つ考え方には、複数の解説で共通する注意点があります。

  • 押し目に見えて、実は下降の始まりのことがある:戻りも同じで、上昇の始まりのことがある
  • ラインや移動平均線を割ると含み損になる:その場合は損切りして次の機会を待つ、とされる
  • タイミングが難しい:早すぎるとトレンドが形成されず、遅すぎるとトレンドが終わっていることがある
  • 押し目が来ないことがある:「押し目待ちに押し目なし」という言葉もある

トレンドラインの引き方や、トレンドの途中に出る保ち合いの形は、三角保ち合いなどのパターン記事も参考になります。

よく紹介されるルールの例

ここでは、出典で紹介されているルールを並べます。 数値はすべて出典ごとの「例」で、最適値や推奨値ではありません。 どの出典も成績(勝率やリターン)は示していないか、前提が不明なため、この記事では載せていません。

移動平均線の並びを使う例(FX 向けの解説)

OANDA 証券は、自社のインジケーターを使った順張りの例を紹介しています。

項目 内容(出典の例)
トレンドの判定 SMA 20・50・100(初期設定)の並び順と傾きがそろう
入る条件 並びがそろったサイン。ローソク足が短期線(20)より上にあるときに限ってだましを減らす(下降なら下)
損切り 直近安値の少し下(下降なら直近高値の少し上)
手仕舞い 逆向きのサインが出たとき
控える場面 並びのサインが交互に出る局面、ローソク足と移動平均線が絡み合う局面

ボラティリティと ADX を使う例(2010 年の連載)

楽天証券トウシルの 2010 年の連載では、一人の執筆者が次のような例を紹介しています。 ADX はトレンドの強さを測る指標で、値が低いとレンジの可能性が高いとされます。

項目 内容(出典の例)
トレンドの判定 26 日の標準偏差ボラティリティと 14 日 ADX が、低い水準から上昇
入る条件 価格が 21 日ボリンジャーバンドの ±1σ の外に出た局面だけ
手仕舞い ボラティリティ・ADX が上昇している間は保有し、価格が ±1σ の内側に戻ったら手仕舞う

歴史的な例:タートル・ルール

タートル・ルールは、先物の売買で使われたことで知られる、歴史的なトレンドフォローのルールです。 考え方の柱は、次の 2 つです。

  • 一定期間の高値・安値のブレイクで入る
  • 値動きの大きさ(ボラティリティ)に合わせて取引数量を決める

具体的な数値は、二次資料(MQL5 の記事)で紹介されている例として次のようなものがあります。 原典の資料はこの記事の調査では確認できていません。

項目 二次資料で紹介されている例
入る条件 20 日、または 55 日の高値・安値の更新
手仕舞い 逆方向への 10 日、または 20 日の高値・安値の更新
損切り 入った価格から 2N(N は ATR に相当する値動きの大きさ)
取引数量 2N の損切りにかかったとき、口座の 1% を失う量

ATR(アベレージ・トゥルー・レンジ)は、値動きの大きさだけを表す指標で、方向は示しません。 損切り幅と取引数量をセットで決めている点は、後半の資金管理の話にもつながります。

手仕舞いの考え方

手仕舞いは、利益の目標値より「トレンドが終わったと判断する条件」で決める形が多く紹介されています。 一方で、損切りは最初に決めておく、という点は多くの解説で共通しています。

代表的な手仕舞いの考え方を比べると、次のとおりです。

手仕舞いの考え方 内容 主な注意点
トレーリングストップ 有利な方向に動くと、損切りの価格も同じ距離を保って追いかける 距離が狭いと一時的な逆行で決済されやすい
値動きの大きさに合わせる ATR の倍数で損切りの線を引き、相場の荒さに合わせる 倍率によって決済のされやすさが大きく変わる
トレンドの構造の崩れ 押し安値・戻り高値を割ったら手仕舞う どの高値・安値を基準にするか、判断が人によって分かれやすい
反対方向のブレイク 逆方向に一定期間の高値・安値を更新したら手仕舞う 逆方向へ下がってから手仕舞うため、含み益の一部を失うことがある
反対のサイン 移動平均線の並びが逆転したら手仕舞う 移動平均線は遅れて動くため、決済も遅れる

架空のサンプルデータの上昇トレンドで、トレーリングストップの線が価格の上昇に合わせて一定の距離で階段状に上がり、価格が下がる間は止まり、トレンドが終わって下げた価格が線に触れる様子を示す図

トレーリングストップ

トレーリングストップは、価格が有利な方向に動くと、損切りの価格も同じ距離を保って追いかける注文です。 逆方向には動かないので、トレンドが続く間は利益を伸ばせるのが利点とされます。

一方で、次のような弱点も挙げられています。

  • レンジ相場では、トレンドにならないまま決済されやすい
  • 距離が狭すぎると、一時的な逆行で決済される
  • 損失を避ける仕組みではなく、最初の損切り幅のぶんは損失になりうる

MT4・MT5 のトレーリングストップは、一定の含み益が出てから動き始めます。 パソコン側で動く仕組みのため、起動したままにしておく必要がある、という注意もあります。

値動きの大きさに合わせる(Chandelier Exit)

Chandelier Exit(シャンデリア・エグジット)は、値動きの大きさに合わせて動くトレーリングストップの一種です。 期間中の高値から、ATR の何倍かを引いた位置に線を引きます。 トレンドに長く乗り、早すぎる手仕舞いを避けるための指標とされています。

株式向けの解説(StockCharts)では、22 日高値から ATR(22) の 3 倍を引く設定が初期値として紹介されています。 これは株式向けに紹介されている例で、FX 向けの値ではありません。 同じ解説では、値動きの荒い銘柄では倍率を上げる例もあるとしています。

合わない相場と弱点

レンジ相場で損失が続きやすい

トレンドフォローの代表的な弱点は、トレンドが出ない相場では機能しにくいことです。 レンジ相場では、移動平均線の並びやクロスのサインが何度も出ては外れる、だましが増えます。 小さな損切りが続き、その後にようやくトレンドが出る、という流れもあります。

架空のサンプルデータのレンジ相場で3本の移動平均線が横ばいのまま何度も交差して並び順が入れ替わり、価格が帯を抜けた後に上から短期・中期・長期の順にそろう様子を示す図

移動平均線のクロスで、だましが 3 回続いた後に大きなトレンドが出た例を紹介している解説もあります。 トレンドフォロー型の戦略は価格にトレンドがあるときにしか機能しない、と書いている資料もあります。 レンジ相場の考え方は、レンジ相場の逆張りの記事で扱います。

そのほかの弱点

  • 遅れ:移動平均線などは過去の平均なので、トレンドの始まりでも終わりでも遅れて反応する
  • 高値づかみ・安値づかみ:トレンドの終盤で入ってしまうことがある。トレンドはいつか終わる前提で、損切りを先に決めるとされる
  • 心理的な難しさ:上がっているものを買い、下がっているものを売るのは、値ごろ感に反するので難しいという指摘がある
  • 手仕舞いの距離の問題:狭いと小さな逆行で決済され、広いと手仕舞うまでに含み益の一部を失いやすい
  • ルールが効かなくなる可能性:かつて機能したルールが、後の時期には機能しなくなったとする研究がある(次の節)

勝率は低めで、損益比で補うと説明されることが多い

トレンドフォローは、勝率は低めで、損益比(リスクリワード)で補うと説明されることが多い手法です。 大きなトレンドは頻繁には起きないので、負けの回数が多くなりやすい、という説明があります。 そのため、損益を左右するのは勝率より、勝ちと負けの値幅の差だとされます。

ただし、勝率や損益比はルール・市場・期間によって変わります。 この記事では、前提がはっきりしない勝率の数値は載せていません。 勝率が低くても成り立つ仕組みは、損益分岐となる勝率の考え方で確かめられます。 詳しくはリスクリワード比の記事を参照してください。

研究ではどう見られているか

為替を含む市場で、トレンドが一定期間続く傾向を報告した研究があります。 トレンドが続く理由として、ニュースへの初期の過小反応と遅れた過剰反応、群集行動などが挙げられています。

一方で、為替の移動平均ルールなどの超過リターンは、1990 年代初めまでに消えたとする研究もあります。 どちらの研究も、取引コスト(スプレッドなど)の扱いは要旨では確認できていません。 この結果から、トレンドフォローが有効・無効とは言い切れません。

資金管理とセットで考える

トレンドフォローでは、損切りが続く時期があることを前提に考える必要があります。 多くの解説で共通しているのは、損切りの価格を先に決め、逆指値注文を使うことです。

損切り幅が決まったら、その幅での取引数量も確認しておくと、1 回の損失を想定の範囲に収めやすくなります。 タートル・ルールの例のように、損切り幅と取引数量をセットで決める考え方です。 取引数量の決め方は、ポジションサイジングの記事で解説しています。

勝率が低めの手法では、連敗が起きやすくなります。 損益分岐となる勝率と合わせて、リスクリワード比の記事で確かめておくと、連敗の時期も想定しやすくなります。

自分で検証する

トレンドフォローのルールは、出典によって数値も条件も違います。 自分が使うルールを書き出し、過去のチャートで記録して確かめるのが、この記事のゴールです。 検証ノートを使うと、記録から勝率や実績の損益比を集計できます。

1. ルールを先に書き出す

検証を始める前に、次の項目を文章で決めておきます。

  • トレンドの判定:例)移動平均線の並び、高値・安値の切り上げ
  • 入る条件:例)押し目で移動平均線付近まで下げた後の反発
  • 損切り:例)直近安値の少し下
  • 手仕舞い:例)トレーリングストップ、押し安値割れ、並びの逆転
  • 控える場面:例)移動平均線が絡み合っている局面

2. 過去チャートで 1 回ずつ記録する

チャートを右へ 1 本ずつ進めながら、ルールに合った場面を探して記録します。 検証ノートには、損切り幅と結果(pips)を入れ、メモ欄にルール名を書いておくと後で比べやすくなります。 結果には、スプレッドなどのコストを差し引いた値を入れます。

3. 後知恵に注意する

過去のチャートは、その後の値動きが見えている状態で判断しがちです。 その結果、実際の取引より良い成績になりやすいとされます。 条件を先に決め、先のチャートを見ないで判断することが大切です。

4. 件数を集める

記録の件数が少ないと、勝率や期待値は偶然で大きくぶれます。 トレンドフォローは、レンジの時期とトレンドの時期で結果が大きく変わりやすい手法です。 両方の時期を含むように、件数を集めてから集計を見るようにします。

集計はあくまで記録した内容のまとめで、将来の成績を示すものではありません。

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